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急転直下13

Auteur: 相沢蒼依
last update Date de publication: 2026-01-10 08:36:56

「千秋の職場なら、ここから歩いて十分くらいのところにあるんですよ」

並んで歩きながら告げると、あからさまに顔を横に背けられてしまった。

こんな態度をとられるのは、いた仕方ない。前回千秋のことをかっさらった状態で実家を出てきたのだから。

「小さな島ですが、農業も漁業もそれなりに盛んなんです。ですから、千秋の仕事が大変みたいです」

「仕事をしているところを見ていないというのに、どうして大変だっていうのが分かるんだ?」

いきなりなされた疑問に、苦笑を浮かべた。何はともあれ、食いついてくれて良かった。

「確か従業員の五名で、三百五十人分の書類を捌かなければならないそうですよ。これって相当大変ですよね」

「…………」

「一緒に仕事をしている方が揃って優しく教えてくれるから、楽しく仕事ができると言ってました」

千秋からの情報を、ちょっとずつお父さんに知らせてみる。表情は相変わらず硬いままだが、何も知らない状況よりはいいだろう。

「折角紺野さんが島にやって来たのに、仕事の関係で抜け出せなくて、すごく残念がっていました」

「勝手に見て、直ぐに帰ると伝えてある」

「逢いたいって言ってました。逢
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  • 残り火 After Stage ―未来への灯火―   恋色のバラに永遠の愛を誓って3

    ***「すっかり遅くなりましたね。あんなに長居をしたらお客さんだった場合、たくさんお金を払わなきゃならないんでしょ?」 スマホの時計を見ながら指摘してみたら、隣にいる穂高さんが小さく笑ったのが空気に乗って伝わってきた。「ん……。長居をしてもらいつつ、ドリンクをたくさん呑んでもらわないといけないからね」「だけど長居を感じさせない話の連続で、時間があっという間でした。やっぱりすごなぁ」 感嘆の声をあげる俺を乗せた車は、どこかに向かっているらしい。行き先を訊ねても、いちいち話を逸らすものだから、諦めて違う話題を喋った。 お店で俺たちの馴れ初めを喋らされるんだろうなと、一応覚悟していたのに、ソファに座った途端に始まったのは、土下座をした俺を称賛する言葉だったり、穂高さんが働いていた当時の話など、話題が次々と変わった。 そんな異様に盛り上がってる俺たちのテーブルに、お客様からの視線がチクチク感じるので思わず見返すと、必ずと言っていいほど、とある一点に視線が集中していた。 店内が薄暗い上に、一番奥側に座っているのにも関わらず、女性客の視線を独り占めしていた、赤いシャツを着ていた穂高さん。しかもちゃっかり指名が入っているのをトイレに行く道すがら、大倉さんが断っているのを聞いてしまった。『申し訳ございません。本日彼は商談をしに来ていて――』 なぁんて言いながら断っているのに、何とかしてよってしつこく詰め寄るお客様がいた。 『なーんもしていないのに、いつもよりお客様が多いのはどうしてだ? そこにいるだけで客寄せパンダならぬ、客寄せ元ホストなんてさ。井上、超ムカつく!』 北条さんがややふざけ気味に言っていたけど、その様子は本当に心中複雑になった。彼の人気をこういう所で、改めて思い知る。カッコイイ穂高さんの恋人が、俺でいいのかなって。 そういう気持ちを悟られたくなくて、妙にはしゃいでしまった。穂高さんはそんな俺を、どんな気持ちで見ていたんだろうか。 そのときのことを思い出し、口を噤んで車窓を眺める。するとそこは、見慣れた景色が流れていた。「ここって……」「懐かしいだろ。はじめて千秋と、一緒に来た場所だね」 バイトが終わる俺を待ち伏せしていた穂高さんが、騙して連れて来た高台の中腹。エンジンを切りライトを消すと、辺りは真っ暗闇に包まれた。「さて、と」 

  • 残り火 After Stage ―未来への灯火―   恋色のバラに永遠の愛を誓って2

    「店長さんの名前は大倉さんっていう人で、彼氏は北条レインっていう、現在ナンバーワンの人だよ」「新旧のナンバーワンを、見ることができちゃうんだね」「大倉さんも元ホストだからね。もしかしたら千秋の心を、奪いに来るかもしれないよ?」 こんなふうにって言いながら、強引に肩を抱き寄せて、掠め取るようなキスをする。ほんのわずかな触れ合いだったけど、心臓が一気に駆け出した。「ンッ!? も、ここ外なのにっ!」「ふっ、抜かりないよ。誰もいないから」「何言ってるんですか、あそこの通りに人がいる」 外でされた接触に思わず声を荒げると、肩を竦めて呆れた表情をあからさまに浮かべる。悪びれる様子がないせいで、余計にボルテージが上がってしまった。「大丈夫だ。ここは薄暗がりだから見えない」 何だろう、違和感ありまくりだ。今日に限って、やたらと大丈夫を口にするなんて。まるで、自分に言い聞かせるみたいに聞こえる。「そんな顔をしていると、大倉さんに好かれてしまうかもしれないね。ほら、ここだよ」 大きなビルにある扉を開けたら、カランコロンという音が鳴り響き、いきなり――。「いらっしゃいませ! シャングリラに、ようこそお越しくださいました」 大きな声と共に、目の前に現れた背の高いイケメン。少しだけ茶色い髪をなびかせながら、見るからに涼やかな一重瞼を細めて、俺の顔を見つめる。 意味ありげなその視線に思わずたじろいで、後ろにいる穂高さんを見上げたら、俺の腰を抱き寄せるなり、ぐいっと中に押し込む。(うわぁ、イケメンのサンドイッチにあってるよ。前を見ても後ろを見ても、整った顔立ちの人しかいない) 持ってる雰囲気だけじゃなく、オーラっていうのかな。それが躰から漂っているせいで、何もしていないのに酔ってしまいそうだった。「店長の大倉です。こういうお店に来るのは、はじめてなのかな?」 穂高さんから引き離すように右手を掴んで引っ張られ、あっという間に大倉さんに密着させられた。いきなりの行動に目を白黒させながら振り返ると、穂高さんはその場に佇んだまま、じっとしていた。(――どうして、助けてくれないんだろう?)「あ……」 そういえば穂高さん、大倉さんの恋人にイタズラして、大層怒らせたんだっけ。そのせいで、俺を助けることができないんじゃ……。 恋人だからこそ、自分ができることはひとつ

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  • 残り火 After Stage ―未来への灯火―   それが恋だと気づくまで――④

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    ***(話し合わなければいけないと思ったのに半年以上の間、何をやっていたんだ俺は……) 農協の内定が決まってからといって生活が一変するワケじゃなかったけど、夏休みや冬休みを利用して島に赴き、バイトと称して職場で仕事をさせてもらったりした。 それ以外の時間があったというのに、穂高さんと顔を突き合わせると、ムダにイチャイチャばかりしちゃって大事な話をせずに、互いの近況報告みたいなものだけで終わってしまい、あっという間に時が過ぎ去ってしまった。 そして年が明けて3月になり、島にある穂高さんの家に荷物を送ってアパートを引き払った。その足で実家に向かうべく、穂高さんの車に付いてるナビに住所を打

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  • 残り火 After Stage ―未来への灯火―   過去への灯火

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    last updateDernière mise à jour : 2026-03-26
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